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2013-10-18

某原稿のための下書き

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地方の書店と若者について

 私は人口一〇万人のとある地方都市に生まれました。父の実家は地元商店街でパン屋を営んでおり、小学生の頃はよく下校途中に寄っていたのですが、店のすぐ隣には小さな書店がありました。一〇坪程度のいわゆる「町の本屋さん」です。店先には週刊誌月刊誌が並び、店内の棚はほとんどコミックスと学習参考書、文庫と実用書で占められていて、テレビで話題になるような最新刊やベストセラーはほとんど積まれてはおらず、当時小学生だったの私の目にはまったく繁盛しているようには見えませんでした。しかしお店の人は朗らかで感じもよく、繁盛していないはずなのに苦しそうにも見えない、私にとって不思議な書店でした。大人になってあらためてその書店が地域の「教科書販売店」だったということを知り、たしかに転校生らはその書店で教科書を買っていたなあと思い出し、さらに書店員になって出版流通に関する法律や慣習を知るにいたり、なるほどよく考えられた業界の仕組みの中にある「町の本屋さん」だったのだなと再認識をしたものです。


 身近にそのような「町の本屋さん」は存在していたものの、それが雑誌やコミックス以外の書籍と出会う機会にはなりえませんでしたから、中学生になり高校生になって行動範囲が広がるころには、少しでも多くの種類の本、みたことのない本を置いているような「少し大きな書店」を探してはよく通うようになりました。


 そうやって当時通った「少し大きな書店」の蔵書数は、もはや一〇〇〇坪超の売場があたりまえのナショナルチェーンに「勤めてしまった」今の感覚でいえば、たかが知れていますし、学生時代を東京で過ごし、その後地元に戻ってきた私の親なども当時から「この辺りの本屋に読みたい本はまず置いてないなあ…新宿池袋には大きな本屋があって専門書も充実していたんだけどね…ああ懐かしい」などと露骨な不満を漏らしていて、それはそれで今の私の職につながるいい刺激として聞いていたものですが、ともあれ当時の私にとってみれば若い好奇心を満たしてくれるような「少し大きな書店」の存在はそれだけでも本当にありがたく、またそのような書店に行くことができるという環境にあったこと自体「運がよかった」というほかになかったのではないかとつくづく感じられています。


 「町の本屋さん」であれ「少し大きな書店」であれ「ナショナルチェーンの本店」であれ「支店」であれ、とにかく人が生まれ育つ場所に「紙の本を売るちゃんとした書店」がないと、そこで育つ若者が「古典や専門書を手に入れたい、それを読んで勉強したい」といったことを考える「契機」そのものが格段に減ってしまいます。「今やネットで好きな本がすぐに買える」とか「紙よりも電子書籍の時代だ」という向きもありましょうが、ネットでの便利な購入や電子書籍はまだそれ自体が発展途上ですし、どちらかというと成熟した大人にとっての利便性の向上をこそ意味しますが、それとは別の次元の話として「紙の本を売るちゃんとした書店」に特有の、本がずらっとならんでいることで演出されるあの「迫力」は、それがある限り永遠になくなることのない「それらを書き残した先人とその集積としての知への畏敬の念を抱かせるもの」でもあり、とくに先に書いた「その場所に育つ若者が自分の人生を考える契機」の演出には絶対に欠かせないものなのです。


 さらに肝心なのは、当事者である若者が普通はそのような「契機」について無自覚であるということに他なりません。ちゃんとした本屋に出会えなかったからといって「もっと本を読みたいな」と思う若者はいても「本を糧に将来を考える契機を逃してしまった!」と考えいたる若者なんていません。人は、既知のものの喪失はともかく、未知のものを喪失することには無頓着であるものです。


 今こそ!そのような「契機」の拡大を意識的に行おうとする書店が「紙の本を売るちゃんとした書店」として全国、特に地方に遍在すべきだと思われるのですが、なかなかどうして地方の既存書店は「売れる本」ばかりを追い「売れない本」を軽視している、あるいは経営的な判断などで軽視せざるを得ないのが現状です。


 再販制のもとにある書店にとって本来「売れる/売れない」という観点はまだまだそこまで重要ではありません。もちろん「小売」書店である以上、売れるものを貪欲に売るという姿勢は重要ですが、逆説的ではありますが、それだけで書店―特に地方の書店は成り立ち得ないのです。


 さて、地元を離れる頃は市内に大きなショッピングセンターができ、郊外にもショッピングモールができ、そのような教科書販売店の安定的な売上を蝕むかのように少子化も著しくなり、その「町の本屋さん」どころか、なんと商店街そのものがなくなってしまいました。父も私も継がなかったパン屋も店じまいしてしまいました。

オチがイマイチなのと、そもそも1000字に収めないといけない。

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